米山氏(故人)は文化人類学者で
アフリカの狩猟民族や日本の農村をフィールドワークされたのち
未開や田舎のみを研究対象にすることは果たして
現代の人類学研究にそぐうものか? と自問した結果
都市をフィールドワークの対象にした"都市人類学"を構想しました
その研究成果のひとつとして
1973年の祇園祭を徹底かつ多角的に調べ尽くしたのが本書です
この本が面白いのは まず
調査隊の学生たちを描写した ユルい日記調の記述が随所に書かれているところで
(”××日に○○君がどこそこでファンタを飲んだ” といったユルすぎる情報多数!)
祇園祭に関わる人々と それを調査する学生たちを 同時進行で観察する という
二つの物語が平行線を保ちながら なおかつ
日本最大級の祭事がアカデミックに検証されてゆく醍醐味があります
(とくに序章と終章は小説のようにスラスラ読めます)
読み進めるうちに
神事としての祇園祭
町衆によるハレの日としての祝祭
そして祭を見物する人々のための観光
神事-祝祭-観光という三つが 緩やかにつながりつつも分離する
祭の都市化が浮き彫りになってきます
(例えば観光客は祇園祭を神事として参加してはいないはずです)
そして 都市化の波が担う町衆の後継者不足という問題と
観光客数の増減に運営する体制や経費が踊らされる経済的側面 といった
都市が祭を飲み込んだ行く末のリアルな現状 を目の当たりにし
祇園祭の影の部分にも目を背けず 容赦なく光を当てています
さらに 祇園祭の事例から都市化と人間との関係にまで踏み込み
都市に生活する人間における日常(ケ)と非日常(ハレ)について
一考を促すに至ります
(スーツ着て会社へ出勤するのは日常ではなく祝祭的な非日常にも成り得るように)
つまり
祇園祭が抱える課題は都市における人間が抱える課題の縮図とも言い得る
といったところでしょうか
余談ですが この1973年の祇園祭を調査した学生たちは
大学の"文化人類学実習"という 一般教養科目のたかだか4単位のために
1年のうち相当な時間を費やしています
アツすぎる!
神事としての祇園祭は7月末日まで続きます
Gion Festivalは密やかに継続中です