2008年6月24日火曜日

「ぐるりのこと。」

「ハッシュ!」橋口亮輔監督最新作。

間違いなく僕の今年ベスト1の映画になると思います。

10年に1作出会えるレベルの傑作です。


個人的に好きな映画を一方的に観て欲しいと

押しつけがましく言うのが嫌いな僕でさえ

この映画だけは1人でも多く

とくに日本人に観て欲しいと本気で言いたいです。


普段は観た映画についてあれこれ書きますが

今回に限っては書く必要性を全く感じません。

人は大切なものを人に伝えたいと思うときほど

寡黙になるものです。


一組の夫婦を通して

1993年から10年間の日本の内側を

社会と個人という

マクロとミクロの双方から描いた作品で

登場人物が全員感情むき出しで本音で語っています。


公式HPおよびパンフに記載されている

著名人のコメントの中から

共感したものを2点 以下に抜粋しておきます。


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この映画の面白さは、過去を水に流さないこと。

この10年に日本に起きた社会的事件の数々を

ある法廷画家の目を通して端々と描く。

───大傑作である。

鈴木敏夫さん

(スタジオジブリ・プロデューサー)


日本映画は、まだ死んでいませんでした。

素晴しく上質な映画に出会えたことを

嬉しく思いました。

"夫婦"というものを描いて、

これ以上の夫婦はいないだろうと感じました。
リリー・フランキーさんと木村多江さんがいい、
特にリリーさんは最高!

おすぎさん

(映画評論家)

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DVD化後に観ても見劣りする作品ではないです。

しかしながら 今このタイミングで観ることを

強くお薦めします。


作品中に日本で実際に起きた有名な事件を模した

法廷でのシーンがいくつか描かれています。

その中で加瀬亮演じる被告が登場するのですが

この加瀬亮のモデルとなっている人物は

つい先日死刑執行された猟奇的殺人犯です。

しかも加瀬亮から発せられるセリフは

あまりにもショッキングな内容の為

あまり公には報道されなかった事実を述べています。


随時笑えるシーンが散りばめられているものの

さすがにこのシーンでは

映画館は水を打ったように静かになり

緊張が走りました。


ひとつだけお節介を焼くと

なるべく体調の良い時に

ご覧になることをお薦めします。

喜怒哀楽全てが表現されていて

しかもその振り幅が

いずれも針を振り切るくらい

大きいからです。


多くの人に観て欲しい強くお薦めする1作ですが

それは誰が観ても面白いということを

必ずしも保証するものではありません。

その理由を作中でリリーさんはこう語っています。


-他人の心なんてわかりっこないさ-


公式HP