2007年4月19日木曜日

「東京タワー」

映画館ですすり泣きが聞こえたのは久しぶりだ。

松尾スズキの脚本がどれだけリリー・フランキーと
相性が合うかに注目して観たが
まさに 水魚の交わり だった。
リリー・フランキーという素材を活かしながらも
松尾スズキ的な笑いが随所に盛り込まれていた。
「10円玉のニオイ」なんて
古くからリリーを知っている人じゃないとわからないはず。

だが 水魚の交わり という喩えをしたのは
笑いの部分だけではない。
オダギリ・ジョーがまんまリリー・フランキーだった。
つまり 松尾スズkはリリー・フランキーが
どういう人物かを熟知した上で
脚本を書いたに違いない。

フジテレビで放映されたドラマ2本も悪くはなかったが
リリーではなかった。

だが映画がドラマの比じゃないくらい優れていたのは
病床のオカンの姿だった。
後半は観ているのが辛くなるくらい苦しそうな演技で
それはつまり 死んで楽にさせてあげたいという気持ちと
死んでしまったらオカンにはもう会えないという
ジレンマから来るリリーの葛藤の眼差しでもあり
死にたいくらい苦しいけれど息子の為に1日でも永く
生きていたいというオカンの愛情表現でもある。

後半は涙腺が緩みっぱなしだった。

福山雅治のエンディングテーマも
映画を観て書き下ろした曲という事もあって
映画の世界を上手く保った曲だったように思う。

原作のファンにもおすすめできる内容だった。




2007年4月18日水曜日

V∞REDOMS/ソニック・ユース at なんばhatch

授業終わって急いで大阪へ移動。
意外と早く着いて一安心だった。

ボアは最近リズムをしっかり作って
聴かせるバンドっぽくなっている気がする。
昔ちいさなハコで観ていた頃は
宇川直宏の映像とか使って
怪しげな新興宗教のような閉塞的なノリがあったが
最近はいい意味で聞きやすい。野外向きかも。
ヨシミちゃんてタフだなと思う。
ほとんど休みなくドラムたたくスタミナは
X JAPANのYOSHIKI並みなのでは?
楽しめたが 強いて言えば
EYEが大人しかった(といっても絶叫していたが)のが
物足りなかった点かな。

長いステージチェンジが終わって
ソニック・ユース登場。
サーストン・ムーアはやはりデカい!
でも僕はほとんどキム・ゴードンしか
見ていなかった。
キムはゴールドのラメのワンピース(X-girl?)姿で
ボーカルを務める曲になるとノリノリで踊りまくる。
この踊りがなんともかっこよくもあり かわいくもあり。
お前はシンディーローパーか!ってくらい
ステージ上を駆け回りながら踊るのだが
結構「ガキの使い」の板尾の嫁の動きと紙一重だ。
美人でスタイルがいいからかっこいいのだろうな。
あの踊りは日本人がやるとダサダサな気がする。
本番でノリの良い曲を中心にやり
逆にアンコールでマニアックな曲をやっていた気がする。

とにかくソニック・ユースのライブは完璧だった。
僕が今まで観たライブの中でベスト3に入ると思う。
正直ボアの事 後半忘れてた。
そのくらい素晴らしかった。

次の来日公演はいつになるかわからないし
その時自分は何をしているかわからないが
ズル休みしてでも観に行くと思う。
ライフワークにリストアップすることにした。




2007年4月10日火曜日

BECK at ZEPP OSAKA

ライブの満足度というのは
ステージにどれだけ予算がかけられているかは
関係なく 演出 つまり センスに尽きる。
今日BECKのライブを観て あらためて再認識した。

冒頭から「LOSER」のイントロが鳴り
会場が沸く。
だがステージ上に現れたのはBECKではなく
BECKのパペット。
そのままパペットがワンコーラス歌い
2コーラス目に入った途端
本人登場。
この時点で鳥肌が立つ。

その後「DEVIL'S HAIRCUT」「THE NEW POLLUTION」と
ベスト盤が出たらこの曲順になるのではという順番で
代表曲が惜しげもなく披露されてゆく。
「MIXED BIZNESS」「NAUSEA」「QUE ONDA GUERO」・・・
シングル曲と新作からほぼ交互に演奏。
この間もずっとパペットがステージ中央で
踊っている。

今回のツアーはとにかく力が抜けている。
「SEXX LAWS」に至っては
わざとはずした歌い方をしたり
BECKが曲中バナナを食べたりして笑いを誘っていた。

ニューウェーブばりばりのアレンジの
新作からの曲を経て
「SEA CHANGE」から3曲を弾き語り。
普通ならここで会場はBECKひとりに集中するはずだろうが
バンドメンバーがBECKが歌うとなりでテーブルを囲み
宴会じみたことを始める。
「SEA CHANGE」といえばBECKが内省的になっていた頃に
作られた問題作で 当時のツアーも映像にロール・シャッハ
テストの画像を映しながら淡々と歌い上げるという内容で
あったが 今回はそれを茶化すかのような演出。
そして最後はBECKとバンドメンバーがテーブル上のものを
楽器にして歌うという和やかな終わり方だった。

そしてもの凄かったのがアンコールの演出。
会場大爆笑。
ひょっとして大阪限定のネタなのか。
(少なくとも日本限定ネタだろう。)
アンコールといえばそのミュージシャンの
最も代表的な曲のひとつを演奏するのが定番だが
BECKともなると そんな次元を軽く超えていた。
(内容はライブ観た人だけのお楽しみということで。)

「WHERE IT'S AT」「E-PRO」でアンコール終了。

BECKはやはり芸術家肌だな と思った。
音楽 映像 パペット アンコール
五感をフルに活用させる名演だった。



2007年4月4日水曜日

「アルゼンチンババア」

面白い/面白くない のどちらでもなかった。
昔はよく よしもとばななの小説を好んで読んでいたので
ちょっぴり肩透かしをくらった思いがした。

身近な者の死をどう乗り越えるか というテーマには
大いに関心があるが
ストーリーの中から得られるものは
僕にとっては特になかった。

ワンシーンだけ興味深かったのは
妻と母に先立たれた夫(役所公司)と娘(掘北真希)が
死ぬ間際の心境を告白する場面。
夫は 愛する者の喪失から逃げ出したかった と言い
娘は 家族一健康な母が衰えていくのを見かねて
死んで欲しかった と言う。
このふたりの正直な気持ちには共感できた。
自分が同じ境遇に立たされたならば
同じような気持ち 同じような行動を
とるかもしれない と。

だが そのような重いテーマを
アルゼンチンババアという
今風の言葉で言えば”都市伝説”化した
ひとりの人間との触れ合いによって
乗り越えてしまうのだが
彼女のどういう点がそうさせたのかが
全くつかめなかった。僕が鈍感なだけかもしれないが。

どちらかといえば
「幼い頃にアルゼンチンババア的な人っていたな。」
という 話の筋とは関係の無い事を思い出した。