2007年12月27日木曜日

「魍魎の匣」

京極堂とは何の縁もない僕が
敬愛する実相時昭雄監督の遺作
「姑獲鳥の夏」を知って 早2年。
再び京極堂の門を叩く日が来た。

原作を知らない僕にとって
宮司・古書店主・陰陽師という京極堂のキャラクター設定は
いささか「いかにも」感があって当初大仰な気がしたが
2作品を通じて観て見ると その設定の正しさに敬服する。

「魍魎の匣」は全てにおいて
「姑獲鳥の夏」をはるかに上回る快作であった。

特筆すべきはやはり この作品が持つ
複雑かつ緻密な世界観であろう。
グロテスクで美少女至上主義
戦中戦後の日本を舞台にしたSF
そしてそれら全てを包み込む
京極堂の呪術的で神秘的な存在感。

堤真一 阿部寛 田中麗奈 クドカン 宮迫 マギー
堀部圭亮 荒川良々 笹野高史など
キャストも僕の好みをリサーチしたのかと思えるほど
好きな役者揃い。

久保(クドカン)が「あなたの幻想小説は全て読んでいる」と言うと
関口(椎名結平)が「いや 私のは不条理小説だ」と切り返すシーンがある。
話の本筋には全く影響のない細かなワン・シーンなのだが
この作品の細部にわたった緻密な設定を窺い知れる場面で
個人的には好きだ。

古来 科学と宗教は同じものとして進歩していた。
それが近代以降 切り離されて別の道を歩むことになったわけだが
この作品を観ていると科学が持つ非合理的側面と
宗教が持つ合理的な側面が重なり合い
観ているうちに どこまでが科学でどこまでが宗教なのか
頭の中がかき乱されて分別がつかなくなる。
ここに原作者の意図があるか否かは僕には量りかねるが
娯楽映画としてこの作品が秀逸であるポイントの一つには
なっているのかも知れない。