2005年6月26日日曜日

蓮實重彦講演@金沢~フレデリック ワイズマンはアメリカで最も重要な映画作家である~

金沢21世紀美術館で、フレデリック・ワイズマンの映画を観て、蓮實重彦の講演を聴いた。


フレデリック・ワイズマンについては、今回の企画で初めて詳しく知ったのだが、

「エグくて優れたドキュメンタリー映画を撮る監督さんだな~」というのが「チチカット・フォーリーズ」を観た後の感想だった。


だが蓮實氏は講演の冒頭から「フレデリック・ワイズマンはドキュメンタリー映画の監督ではなく、

アメリカで最も重要な映画作家です。映画はドキュメンタリーとかフィクションとかという区分は重要ではなく、

1秒24コマの中で構成された映像が私たちの前に表現されていることが重要なのです。」と、

僕のワイズマン観をいとも容易くひっくり返してしまった。



続けて蓮實氏曰く、「ワイズマンは素人に迷惑をかけない極道である。」と。


ワイズマンは弁護士でもあり、出演を受諾した人すべて契約を交わすらしい。

そして、出演を拒否した人は絶対にフィルムには映さない事を徹底しているという。

裏をかえせば、契約を交わした人に関してはカメラで徹底的に追い込んで、

出演者の表情や言動を克明に映し出す事に成功している。

これが蓮實氏の言う「素人に迷惑をかけない極道」たる所以である。

(ちなみに「素人に迷惑をかける極道」とはマイケル・ムーアの事を指す。)



ワイズマン映画のもうひとつの特徴として、蓮實氏は

「字幕もBGMもナレーションも一切入れず、映像を観れば全てが語られている構成になっている。」点を挙げていた。

確かに僕の観た「チチカット・フォーリーズ」も、精神異常の犯罪者矯正施設で過ごす人達を映しているだけである。

しかしながらワイズマンの編集の妙によって、矯正施設でのむごたらしい惨状が恐ろしいまでに浮き彫りにされていた。

僕はホラー映画が嫌いで見ないのだが、こっちの方が背筋の凍るような映像だと思うし、

映像が頭にこびりついて消えないのだ。



「ワイズマンは1930年生まれで、ゴダールとクリント・イーストウッドと同い年だ。

この75歳の3人が現役で映画を撮り続けていることが重要」と蓮實氏は語った。

実際、ゴダールもワイズマンも新作が間もなく完成するそうだし、クリント・イーストウッドはアカデミー賞を受賞した。


恐るべき75歳!


メロメロパーク