2006年3月29日水曜日

「空中庭園」

秘密のない家庭など虚構にすぎない。
もし仮に「秘密のない家庭にしよう」というルールが
存在する家庭だったとすれば
それは最初に言い出した者が
家庭を完璧にコントロールするための罠だ。

言い換えると 
家庭を自らの思うがままにしようという
設計主義自体が秘密であり 
当の本人が自らルール違反者だ。

家庭を思うがままにしたいという欲求は
幼少期における愛情の受容欠如に起因する。
「あの子なんて産まなきゃよかった」
などという 
肉声だか幻聴だか判らない声が耳をよぎる。

愛情欠如はルサンチマンを膨張させ
完璧に計画し尽された愛情に満ち溢れた
王国建設を決意させ 実行へと促す。

王国の主は
愛情=秘密のない間柄 という
不文律で国を統治する。

だが自らが法を犯しているのと同様に
国民たる家族もそれぞれに秘密を抱えながら 
国王のご機嫌をとっている。

主はそれに敏感に気付き
秘密を抱える家族への憎悪の念が
日に日に強くなってゆく。

主はついに発狂してしまう。
空からは血の雨が土砂降りだ。
すると 幼き日に親から受けたらしき
愛情のワン・シーンが
突然フラッシュバックする。

愛情を注ぐ親と
愛情に飢えた子。
異なる位相に居たが為
愛情がねじれの位置に存在しただけなのだ。

絶叫・・・

主は
「秘密のない家庭」の虚構に
ようやく気付く。

家族は
本人が忘れてしまっている
誕生日プレゼントを買いに
内緒で寄り道をし
通勤バスで落ち合う。

今からでも遅くはない。
本当の家庭を作ろう。