2008年12月17日水曜日

「落下の王国」

映画の好き嫌いは鑑賞直後にハッキリとするタイプだ。
(その分再度観返して嫌い→好きに変わることも稀にある)
だがこの映画に限っては観終わって映画館で頭を抱えてしまい
好きとも嫌いとも言い切れない気持ち悪さを未だひきずっている。

世界遺産をロケ地に使用した壮大なスケールと
石岡瑛子が手がけた衣装を身にまとった登場人物と聞いていれば
美しい映像など事前に容易に想像がつく。実際文句なく美しい。

だがその美しい映像とやらを結ぶ像が
入院中の若い男性と近所に住む幼いが早熟な少女との
会話上の寓話のようなものから結ばれているという全体の筋書きに
なかなか入りこむことがどうしても出来なかった。

それならば・・・と心の中で耳栓しながら観ようと試みるも
病院での男性と少女のシーンが予想以上に多いのに加え
肝心な美しい映像も場面(ロケ地)が目まぐるしく変わるせいもあってか
時間の流れが早く全体的にせかせかしている気がして
もっとじっくりゆったり映像を観ていたいという我が意にやや反していた。

だからと言って嫌いな映画と容易に切り捨てるにも違和感を覚える
何かがある。
予備知識なしに観たので詳しい背景は知らないが 
スパイク・ジョーンズも関わるアメリカ映画であるにもかかわらず
ヨーロッパ映画へのオマージュとおぼしき映像がやたら出てくる。
(勘違いでなければタルコフスキー セルゲイ・パラジャーノフ
テオ・アンゲロプロス チェコアニメ 
そして「ニュー・シネマ・パラダイス」など)
それが本作においてどういう位置づけであるのか
また作品に添える美しい花となっているのか
それさえ判断がつきかねてさらに頭を抱えてしまったわけであるが
「構想26年 撮影期間4年」を要した
間違いなく"ヒット"ではなく"ホームラン"を狙っている作品であるという
風格らしきものは何となく感じ取れた。
2月にDVDが出たタイミングで再度観てみようと思う。
理想を言えば映画館並みのハイスペックなスクリーンで観返してみたい。