2007年1月22日月曜日

「それでもボクはやってない」

周防監督が言うとおり

「痴漢犯罪の冤罪」ではなく

「日本の刑事裁判制度の問題点」が

テーマとして描かれた

濃密な映画だった。


では「日本の刑事裁判制度の問題点」とは

何か。

主人公(被告役) 加瀬亮の台詞に

それは象徴的に表されていた。


「裁判とは真実を追究する場ではなく

 状況証拠や目撃証言をもとに

 有罪か無罪かを結審する場である」
       (筆者による意訳)


つまり 裁判における「真実」は

被告人にしか知り得ないという事であり

判決が「有罪」か「無罪」かという判断は

100%「真実」を語りうるものではない

という訳だ。


このことをさらに拡大解釈すればこうなる。


日本は法治国家であり

法の下の平等が保障されている。

そして国民は その法というルールを基に

日々暮らしている。

その法治国家 日本において

争いごとや犯罪は法を司る司法が判断を下す。

だが司法があくまで法の下に平等であるという

厳密なルールに従い意思決定を行う為には

状況証拠や目撃証言という

「客観的」な判断材料ももってしか

人を裁く事が出来ない。

そしてこの事は

司法判断にわずかばかり誤審の可能性を残す

余地があるという欠陥を否定し得ない。


映画で描かれていた「冤罪」のみならず

逆に疑わしき人が

証拠不十分で不起訴になる場合にも

同様の事が言える。

法の下に平等である事と

「真実」は必ずしも一致しないというジレンマが

この映画では緻密かつ克明に描かれている。


判決のシーンで息を飲んだ。

最後まで「有罪」か「無罪」かわからない展開に

緊張しながら 

じっとスクリーンを見つめ続けた。