2010年10月14日木曜日

「シルビアのいる街で」





一生のうち何度も何度も観続ける映画になりそうな気がします



きっかけは最も好きな映画監督 ビクトル・エリセの影響でした

エリセが絶賛したことが「シルビアのいる街で」を世界中に注目するきっかけになった という話を聞き

是が非でも観てみたいと思ったからです



エリセの「エル・スール」には 光で時間の経過を表現したシーンがあります

「シルビアのいる街で」にもその影響を感じさせる箇所があるのみならず

ホセ・ルイス・ゲリン監督は 光 風 ガラス などを巧みに用い

舞台となる街ストラスブールの時間的 空間的奥行きを克明に描写し

主人公の彼や彼女が画面に登場する もしくは 路地を曲がるなどして画面から消える前後の映像を

執拗に長回しで撮ることで 主人公を街の中に相対化させ

ストラスブールの街の魅力を十二分に引き出していたように思います



この映画にはドラマチックなストーリーも一切登場しなければ

人工的に付け加えられたBGMすら1曲もありません

さらに言えば 翻訳家さんの1文字当たりのギャラが気になるくらいセリフすら数える程度です

言ってみれば 街のごくありふれた日常を撮ったような情景が延々と続くわけですが

主人公の彼がひとりオープンカフェから眺める視線が

反復する日常を退屈でマンネリしたものから刺激に満ちた艶っぽいものに変えているところに

何度観ても飽きなさそうな耐性を物凄く感じます



視線の先はずばり 美しい女性たちです

しかも 焦点はひとりの女性になかなか定まらないというタイトル泣かせな展開で

男性の心理を言葉を用いず映像で赤裸々に描写しています

(ここが良いのです とても!)



とはいえ 人間の周辺視野は広く 興味もない(美女以外の)人々も目に映ってしまい

女性の美しさと街のリアルさに花を添えているわけです



ヨーロッパ映画にありがちな小難しい蘊蓄は一切出て来ません

歴史あるストラスブールの美しい街並みが全てを内包しているから

その必要も無いと思います