トム・フォード監督デビュー作
「シングルマン」
未だ興奮冷めやらぬ思いがします
ファッションデザイナーらしい舞台美術への細部に至るこだわりと
フェティシズムが絡み合った映像は
終始隙がないながらも 息苦しさがなく優雅
息苦しくない優雅さゆえ 息つく暇もなく魅了されてしまう感じがしました
タイトルロールからそのまま冒頭になだれ込む全篇を象徴(予告)するような映像美が
五感を研ぎ澄ませる余り
コリン・ファース演ずる主人公の目と鼻が敏感かつ貪欲にエロスを嗅ぎつけるや否や
観ている側としては
登場人物の身体の至る所があたかもフェティッシュの対象物であるかのごとく焦点が合い
それが脳内でシャッターを切りクリアに現像され続けてしまうため
驚嘆するほどの彼の貪欲さと敏感さに頭の中が埋め尽くされてしまいました
しかしながら 眼鏡の奥は哀しいまなざし
貪欲かつ敏感な彼の感覚は
戻らない過去に対する繊細さを逆に浮き彫りにしていた気がします
音楽も素晴らしかったです
中でも極めつけは
これで
ベネックスがブルーで表現した世界をトム・フォードはチョコレート色に染めました
トム・フォードの自伝的要素も盛り込まれたとのことですが
ゲイ・ムービーというより
性差を越えたエロティックさと人の絆と悲哀に満ちていたのが
良かったのではないでしょうか
もういちど観たいと思います